今月3日、泡坂妻夫氏が亡くなった。
大好きな作家の一人だ。直木賞以後の時代物はほとんど読んでいないが、亜愛一郎も曾我佳城もS79号も、「11枚のトランプ」「乱れからくり」「喜劇悲奇劇」なども、その遊び心と奇術の素敵な世界に夢中になって繰り返し読んだ。
しかし一冊だけ挙げるなら敢えて しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫) だろうか。
この仕掛けには唖然とした。
ずっと後になって、この本の現象と曾我佳城シリーズの一編に触発されて、トリックを一つ思いついたことがある。
さらに後になってそれをなぜか匿名ダイアリーに書いたのだが、追悼の意を込めてここに再掲しておく。
「ブック・テスト」と呼ばれるマジックの分野がある。
奇術師が観客に本のページをランダムに開いてもらい、そのページの内容を言い当てる、というもの。
いくつかのトリックがあるらしいが、僕が知っているのは泡坂妻夫「しあわせの書」を使うもの。この稀代の傑作を使えば誰にでもできる。
このトリックをテレビで種明かしするという暴挙に出たマジシャンがいたようだが、トリックを未読の人に明かさないよう念押されているのでここでは述べない。
オリジナルのトリックを思いついたので書き留めておく。
手順
1.本を閉じたままテーブルに置いて、観客に栞を好きなところに挟んでもらう。
2.演者は後ろを向き、観客に本を取って栞を挟んだページを開くように言う。
3.そのページの一番最初に出てくる単語を紙に書き写してもらう。単語がページにまたがっていて意味を成さない場合はその次の単語となる。
4.紙は伏せ、本を閉じてもらい、演者は後ろ手で受け取る。
5.演者は向き直り、これから透視を行う旨を宣言する。
6.本を額に当てて念じ、観客が紙に書き写した単語を口にする。
この手順では読心術というより透視術となる。
紙に書き写してもらう必要はなく、憶えてもらうだけでもいい。ただこの方が終わり方がきれいになる。
ブック・テスト
自分で思いついたからと云ってオリジナルかと言われると不安なんだけど。