- 作者: 田中ロミオ,mebae
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
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そしてこれは現代のトーマス・マン「幻滅」だ。この主人公に感情移入する感覚は得難い体験。
誰しも持ったことのある、しかし形容されたことのない感情、思考を形にするのは文芸の大きく偉大な役目である。この場合「邪気眼」として既出ではあるけど、小説にした功績は大きい。「万人の言はれざる思ひに形を与ふること、すなわち真の芸術なれば」
「幻滅」に比べるとスケールは小さいかもしれないけど、対象が狭いとか時代の産物とかいう卑小化は当たらない筈。この作品によって普遍化されてもいいくらい。
「君に届け」では満足できず、「オナニーマスター黒沢」では荒削り過ぎるところへ、田中ロミオには挑戦的な主題を盛り込みながらエンターテイメント性を維持する筆力がある。実験的な文芸ってのはこの界隈に舞台を移してんのかね。