インピーダンス・マッチング

ISBN:9784902950694:detail
字が大きくて行間が広くて薄い、いい小品だ。中編なので本一冊にすると寂しいけど、ネットで読むのは違う気がする。自分の生活から隔てられた場所にある世界に触れる方法として、ブログも悪くないけど読みやすいものは多くない。私的な部分もうまくまとめて、結末まで付けることのできる小説にしたのはいい手法だ。一つの人生しか送ることのできない不満を解消する手段としても成立している。
異色な感じに惑わされた部分はあって、未熟といえばそうなんだけど(下手にスミスチャートに重ねられても興醒めだけど)、読むのは楽しかった。
電子回路の話も全然理解できる範囲だろう。こういうお勉強小説(著者が勉強して書いたものではなくて、読者が勉強した気分になれるもの。cf.伊丹十三の映画)はみんな好きな筈。ミステリにおける事件と同じで、話を貫く大きなプロットとして機能する、何でもいいけど読者にとって未知のものだ。